2011年の自治体ホームページのおかれた状況
これからの自治体サイト作成についてお話しする前に、自治体ホームホームページがどのような流れの中にあるのかを振り返ってみたいと思います。そうすることで、これから何をすべきなのかが非常に明確になってきます。
1990年代の後半にインターネットが日本国内で普及して以来、自治体はホームページを持つことが求められるようになり、最初は、「技術のわかる者」がその担当としてサイトを制作してきました。どの自治体も手探りの状態で、よく言えば自治体ごと個性的なサイト、悪く言えば混沌としたサイトというのが、当時の状況です。
一方で、これまで「情報」を、マスメディアや市役所への問い合わせという形で得ていた一般の方々の情報取得の方法が代わることによって、自治体ホームページ上にもあらゆる情報が的確に掲載されていることが求められるようになりました。
これへの対応のため、自治体ホームおおよそ次の2つの切り口よってリニューアルされることになりました。
1.CMS の導入
2.アクセシビリティ、ユーザビリティ ( & 自治体サイトランキング)
これらの具体的な内容は今回は省きますが、「これから」を考えるうえでポイントとなることだけをお話ししたいと思います。
1.CMS の導入
CMS 導入の目的は大きく以下の通りでした。
●統一的なデザインの採用
これまで各部署ごとにバラバラだったりしたデザインを、自治体として1つのデザインに統一。
●効率的な更新環境の整備
これまでは、「技術のわかる者」が「更新担当者」となって、各部署からの依頼に応じて更新作業を担当しているという体制がほとんど。CMSの導入によって、各部署ごとに更新作業ができるように。
●掲載する情報量の増加
各部署が独自にホームページを更新できるようにすることで、自治体サイトの情報量を増やす。
これら3つの目的が達成されたかは別として、CMS の導入によって、自治体ホームページが大きく前進したのは確かです。
2.アクセシビリティ、ユーザビリティ ( & 自治体サイトランキング)
CMSの導入とも関係しますが、CMS導入の際に関連キーワードとして頻繁に登場したのが「ユーザビリティ、アクセシビリティ」という言葉です。簡単に言うと、自治体ホームページを「見やすく、わかりやすく、やさしく」するという考え方で、CMS の吐き出すhtmlソースであったり、読み上げソフトのアッドオンなどによって、これらを解決するというのが基本的なソリューションです。
また、各社によって発表される「自治体サイトランキング」の中で、「ユーザビリティ、アクセシビリティ」が重要項目として取り上げられていることから、各自治体ともこれへの対応を意識したという経緯もあります。
また新しい動きとして、自治体で提供されているサービスのベースは全国共通なのだから、全国の自治体がメニューを共通化するのが利用者視点からするといいのではないか…という立場から、「ユニバーサルメニュー」という考え方も提唱されて導入が始まっています。
この CMS & アクセシビリティ、ユーザビリティを切り口としたリニューアルが一段落し、twitterやFacebookをはじめとする「ソーシャルメディア」の台頭によって、意欲的な自治体ではこのソーシャルメディアの利用を始めているというのが、現在、2011年の自治体ホームページのおかれた状況かと思います。
佐賀県武雄市 のように、Facebook に軸足を完全に移してしまったところもあります。
現在の自治体ホームページに見られる課題
さて、「CMS & アクセシビリティ、ユーザビリティ」の導入によって大きく前進した自治体ホームページですが、残念ながらまだまだ大きな課題を抱えています。一つは、「CMS & アクセシビリティ、ユーザビリティ」に内包する課題、もう一つは、まったく別なことろにある課題です。
「CMS & アクセシビリティ、ユーザビリティ」に内包する課題からまずはお話ししましょう。
【課題1】 CMS が解決できない最も重要なこと。 ~情報を掲載する判断と目~
CMSの導入によって劇的に更新作業のハードルが下がりました。これまでは「技術のわかる担当者」に更新作業を全部お願いしていたものが各部署で更新できるようになったのですから、その変化は大変なものです。
しかし忘れてはならないのは、あくまでも「更新するためのインフラ」が整備されたに過ぎないということ。CMSの導入によって、各部署ページの更新作業、(そしてこれが一番重要なことなのですが、)ページ更新の判断が各部署に任さることになりました。しかし、任された部署側が動かなかったら何も進みませんし、CMS導入前よりも却って状況が悪くなることすらあります。
CMS自体は単に技術的なツールにすぎませんが、CMSの導入によって、更新作業の「権限・判断・作業」が各部署に委譲されるという、組織的な変化が起きていることがポイントです。これは単に、”更新作業を怠る” という単純なことではないことに注意してください。もう少しご説明しましょう。
地方ではまだまだな部分がありますが、東京を中心とする都市圏では、「サイト上にすべての情報が掲載されている」ということが最前提になっています。サービスを提供する企業ではこれへの対応のため非常に多くのIT投資をしています。それが求められ、そこに注力することが企業の存続に必要だからです。
同じ視線は、当然、国や自治体にも向けられます。
対して自治体側は、先ほどお話ししたように、サイト更新の「権限・判断・作業」が各部署に委譲されていますので、外部からの「視線」に対する温度差がどうしても生まれてしまいます。ある部署では積極的に更新するのに、他の部署では必要な情報すら掲載されていない…ということが発生します。
これに対応するためには、
・どんな情報を掲載すべきか?
・どんなタイミングで掲載すべきか?
・掲載すべき情報で、未掲載のものはないか?
という統一ルールを、各自治体ごとに持っておくことが必要になります。
CMS導入の際、「こうやって更新してください」という「操作マニュアル」は納品してもらっていても、運用ルールや掲載基準などの「運用ガイドライン」まで作り、実施している自治体は少ないのではないかと思います。
(「リンクはこんな色で…」という、デザインガイドラインだけ導入したというところはあるかもしれませんが…)
統一ルールに加えて、「ネット利用者の目」で自身の自治体サイトを見ることができる「Webマスター」に相当する担当者も必要になります。「この前、新聞に掲載されたあの情報は、うちの自治体サイトにも掲載しておかないといけないはすだ。」との判断ができる人のことです。
ルールを作ったとしても、通常、それがスムーズに運用されるまでは時間がかかりますので、それをアドバイス・監督することが必要です。そうすることで、自治体サイト全体としてのクオリティを保つことができる一方で、各部署の担当者に対して「どんな情報を掲載すべきか」の判断を伝授することができます。
忘れてはならないのは、「Webマスター」には、各部署に指示する権限を持たせることです。
一時期、一般企業では、「Webマスター」を社長直属にしたり、企画・経営に所属させたりと、企業の意思決定の最上部に位置付けていた時がありました。これは、Webサイトが単なる広報・宣伝という枠組みを超えて、「会社そのもの」として認識されているからにほかなりません。
※Webマスターは、いわゆる「システム担当」とは違っていることも重要です。
次回もお楽しみに♪
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