CMSを導入したのに、こんなはずでは…の大合唱。
今回は少し話の切り口を変えて、CMS(コンテンツ・マネジメント・システム)の導入や、システム開発に関する話題です。
ここ数年、多くの企業や自治体を中心に、CMSの導入が進められてきました。CMSは、膨大になったWebサイト上のデータを効率的に管理・運営するデータベース連動型のシステムと、ひと口に説明できます。わかりやすく言うと、サイト上のページが数十のうちは管理できますが、何百・何千ページにもなってくると、ある情報を追加するのにあっちもこっちも変更しないといけなくなるので、それをシステムで自動的に管理できるようにしよう、というもの。以前は、そのシステムが数千万円もの費用が必要だったため、大企業やWebサイトによって売り上げを上げているネット会社ぐらいしか手が出せなかったのですが、5年ほど前から数十万~数百万円といういくつもの安価なパッケージが登場してきたことによって、比較的規模の小さい企業や、自治体などに広く導入されるようなっています。
しかし残念なことに、CMSを導入したのに「こんなはずではなかった…」という声が数多く聞かれます。
CMSソフトの種類にかかわらず、また予算規模にもかかわらず聞かれます。極端な話、そして、これは実際の話ですが、数千万~億単位の費用をかけてCMSを導入したところからさえも、「こんなはずではなかった」という声が出てくるのです。このような状況なので、「CMS導入プロジェクトのほとんどが失敗に終わっている」とさえ言う人もいるほどです。
では、どんな点について「こんなはずではなかった…」「失敗だった…」と言っているのか。いくつかをピックアップすると…
(1) 大幅な作業効率化を見込んで導入したのに、そのようにはならなかった。
(2) 社内の作業手順とシステムとが合わない。
(3) 柔軟にサイトを変更できなくなった。
(4) カスタマイズに予想外の費用がかかった。
(5) CMSの導入によってサイトが頻繁に更新されるようになるはずだったのに、そうなっていない。
などなど、本当に様々。
失敗の根本にあるのは…
ただ、現象としての失敗は様々なのですが、その根本的な部分はほとんど同じです。
つまり、「全体を見ている専門家がいない」という事実。
通常、CMSの導入にあたっては、CMSソフトの開発会社 or Web制作会社が担当することになります。恐らく、「コンテンツの管理を自動化して、大幅に作業効率化!」「HTMLを知らない人でも簡単にサイトを管理できます」などなどの説明がされるのではないかと思います。導入実績50社!、などと。
他方、導入を検討している側では、通常、Webマスターや更新担当者が、発注側の窓口を担当することになります。サイトの運用や更新作業を制作会社さんにいつもお願いしている会社の場合、窓口を担当する方は、Webサイトやシステムの導入についてはまったくの素人である場合が圧倒的。Webマスター自身で更新している場合でも、その方にスキルによってプロ並み~素人まで、本当に幅広くなります。
実際にプロジェクトが始まると、
CMS導入会社・・・「ここの設定はどうしましょうか? 他のお客さんも多くが、こう設定しています。」
窓口担当者・・・・「はい。では、その設定でお願いします。」
などなど、導入に際して様々なことを決めながらプロジェクトを進めていくことになります。
しかしちょっと待ってください!
どうしてその設定が必要なのか。その設定によってどんな機能が追加されるのか。その機能追加によって、サイトの運用がどのように変わるのか。その運用のために、企業内の動きを変える必要があるのか、ないのか。そういうことをしっかりと認識しているでしょうか。
CMSの導入における「落とし穴」を避けるために
Webサイトは、その性質上、非常に組織横断的です。
紙媒体の場合、通常、会社の組織やサービスごとに制作され利用されていますが、しかし、Webサイトの場合、サイト全体の中に会社の組織やサービスが組み込まれている関係で、Webサイトの運用は極めて組織横断的にならざるを得ないという性質があります。したがって、Webサイトの運営部隊を、広報部や宣伝部ではなくて社長室直属に置く企業もあるぐらいです。逆な見方をすると、Webサイトを管理する人のところには、企業内の全情報が入ってくるということになります。そうでなければサイトの管理などできないわけです。
このことを踏まえてCMSの導入について考えてみれば、CMSを導入するということは、単にWeb担当者にとっての "サイトの更新を効率化するツール"、"サイト制作ツール" を導入するということなのではなく、会社内の情報の流れを大きく変える "全社的なプロジェクト"、だといえます。このことを考えないで、サイトを自動的に更新してくれる「魔法のツール」だと勘違いしてしまうことが何と多いことか…。
先ほどの失敗については次のように言えると思います。
(1) 大幅な作業効率化を見込んで導入したのに、そのようにはならなかった。
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単に「Web担当者の作業」を効率化するだけのために導入したのでは意味がありません。Web担当者が更新しないということは、他の誰かが追加・更新しなければいけないということです。誰がどの情報を、どんな手順で更新するのか、そして更新できるスキルを持っているのか。さらに、ここが一番重要ですが、どんな情報を、どんな切り口のどんな表現で掲載するという立案や判断を、その誰かができるかどうか。
もし、これらが整わないのであれば、結局、Web担当者の作業として戻ってくるだけです。
(2) 社内の作業手順とシステムとが合わない。
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どの会社にも、情報や書類の「流れ」があります。この流れは会社ごとに様々で、その会社の文化をも左右しているはずです。一方、CMSを導入するということは、その独自の「流れ」を一旦破棄し、CMS独自の承認フローに会社の流れを合わせることを意味します。このことを知らずにCMSを導入しても、「社内の作業手順とシステムが合わない」という結果になってしまうのは当然です。CMSに合わせて会社内の「流れ」を再構築するか、会社独自の「流れ」に合わせてCMSをカスタマイズするのか(当然、カスタマイズ費用が発生します)を、CMS導入前にしっかりと "会社全体として" 検討しておく必要があったはずです。
(3) 柔軟にサイトを変更できなくなった。
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システムで管理する以上、あるフォーマットに合わせてサイトを制作する必要があることは仕方ありません。また導入したCMSソフトの機能によって、できること / できないことが出てきてしまうのも当然です。
CMS導入前に、形式はある程度固定されていても更新業務が効率化するのがいいのか、柔軟にサイトを変更できるような形がいいのか、など、どんなサイト運営を目指そうとしているのかをしっかりと見極めておく必要があります。
(4) カスタマイズに予想外の費用がかかった。
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(2)(3)とも関係しますが、どんなサイトを目指すのか、そのためにどんな機能が必要で、社内の運用体制や「流れ」がどう変わるのか、をしっかりと見極める必要があります。その上で、自社にとっての最適なCMSソフトは何か、を検討することになります。導入実績が多いから…ということだけでCMSソフトを選定してしまうと、自社の運用にあわなかった場合、予想外のカスタマイズ費用がかかる原因にもなります。
(5) CMSの導入によってサイトが頻繁に更新されるようになるはずだったのに、そうなっていない。
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CMSの導入によって、更新担当者が分散化され、コンテンツの管理は効率化されたかもしれません。しかし、新しい担当者がサイト更新の重要性に対する高い意識を持っているか、更新できるスキルを身につけているかは、システムとは別な問題です。また、比較的簡単に更新できるとはいえ、CMSで管理するのはあくまでも枠組みだけにすぎず、サイトの情報の中身については、テキストを書かないといけませんし、画像を作成しないといけませんし、レイアウトを調整しないといけません。場合によっては、HTMLの知識がなければ始まらないものさえあります。
CMSは、導入すれば何でもできるという「魔法のツール」ではなく、あくまでも「箱」に過ぎません。これを生かすも殺すも、人次第です。
CMS導入会社は、悪く言ってしまえば、導入さえしてしまえば終わりです。その会社に役立っているかどうかは、関係ありません。(う~ん、悪い言い方だな…(^_^;)
大切なのは、これらの CMSの導入における「落とし穴」を知っている専門家が社内にいるかどうか。
もしいないのであれば、二人三脚で歩んでくれる頼れるパートナーが得られるかどうか、だと思います。
CMS導入において難しいのは、担当責任者が何も知らないといのでは話になりませんが、システムだけを理解している人でもダメ、サイトのデザインだけを理解している人でもダメで、それら両方は当然のこと、会社全体の情報の流れと導入による変化を的確に理解できる人が必要だということです。
次回をお楽しみに♪
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