今回は、いつもとはちょっと趣向を変えて、『2018年 就職・転職を考える』 という本の紹介と、そこから見える「企業の未来」についてのお話です。
この『2018年 就職・転職を考える』という書籍は、若者のキャリア形成をサポートしている「キャリア・メンター・ネットワーク」の堀口卓志さんが書かれたkindleの電子書籍で、99円で購入できます。
(本当は無料にしたかったそうですが、そういう設定がなかったので最低価格の99円になっているのだそうです)
「な~んだ、就職活動をしている人向けね...」
と、すでに働いている方や経営者の方は「私には関係な~い」と思われるかもしれませんが、実は、そんなことはありません…(ーー;)
読んでみたら、あらあらビックリ!
(私も含まれますが)中小・零細企業の経営者も「なるほど!」と思うことがいっぱい書かれていました。
他と一線を画した「就職本」
この書籍、よくありがちな「面接ではこうすると合格する」とか、「服装はこうしろ」とか、そういうテクニックの話は一切ありません。
そのような「内定をもらう」ことを考えているものではなく、学生の方々に対して「これから皆さんが足を踏み入れようとしているところは、今、こうなっています。そして将来、こうなります」「ですから、こういう考え方が必要になります」ということが紹介されています。
その背景には、今の日本が、「大企業に就職すれば、定年までずっと安泰~♪」という、かつての高度成長を前提にした社会ではないという認識があります。もう一段階言えば、(1)大企業と言えども(後で出てきますが、銀行であっても)会社が消えてしまう可能性があるということ、(2)終身雇用という雇用形態が無くなってきている、という2つの大きな流れがあります。
このような状況にありながらも、就職活動といえば相変わらず、大企業に就職希望が殺到し、内定を取るためのテクニック論ばかりが目立っており、「この時代の就職・転職をどう考えたらいいのか」という本質的な部分をしっかりと考える必要があるとのことで、本を書かれています。
実際、堀口さんは、就職の支援、または就職した後にその方が直面する様々な相談にのってきたという「現場」がそこにはあります。
就職先は、業界の未来と直結している
今の学生の就職先で人気なのは「メーカーや金融関係」なのだそうです。
書籍の中では、業界の現状分析から見える業界の未来を踏まえて、入社後に訪れるだろう「運命」を紐解いていきます。例えば、
「その業界はこれからこうなります。入社した直後は、友達からうらやましがられるかもしれませんが、その先皆さんにはこんな運命が待ち構えています」
という感じ。
それもそのはず、この本を書かれている堀口卓志さん、実は、企業の組織運営・人材開発・人材育成を担当する経験豊富なコンサルタント。
皆さんがご存じなあの企業の、幹部候補生の人材育成なども担当されています。
当然、人材開発は、業界の将来展望を理解した上で進められるわけですから、今の新入社員がその業界で将来的にどうなるのかはお見通しなのです。
例えばこんな話が紹介されていました。
銀行は潰れないと多くの人が思っていますが、そんなことはありません。地方銀行はこれから合併が多くなりますし、規制緩和による金融業への新規参入もあり、普通の企業のように倒産する銀行も出てきます。
また、銀行はどこもお金を預かってお金を貸しているだけで、金利もほぼ一緒。事業内容はどの銀行も変わらないので、会社存続のためには必然的に効率を追求していくことになります。コンビニには24時間のATMがありますので、銀行の窓口業務はどんどんなくなります。さらに現金を使わなくなり電子マネーの利用が増えてきますので、やり取りはお金ではなく電子データだけになっていきます。ですから、(銀行自体がなくなることはありませんが)これまでバックオフィスで必要だった大量の人員が、今後は不要になります。
(雨宮による意訳)
さらに、こんな話も紹介されていました。
世界最大級の投資銀行ゴールドマン・サックス。2000年には、本社に600人の株式トレーダーがいたそうです。それが、株式トレードがコンピューター化(AI化)されたことで何と、現在は、2人!しかいないのだそうです。
学生側から見ると(外側からから見ると)、銀行や証券会社は将来安泰だと思われがちです。ですから人気企業になっているのだと思います。ですが、業界の流れや実際の出来事をよくよく見ると、全く違う将来像が見えて来るというわけです。
定年まで安泰~と思って金融関係に入社しようとしているのに、実際はどんどん人員削減をしていかないといけない業界、もっと言えば、新入社員どころか現在所属している社員すらもその会社にいられるのかすらわからない…そういう状況だというのです。
【記事追記】
このブログ記事を公開した2日後に、こんな記事が新聞に出てきました。
みずほ1万9千人削減へ…店舗集約、IT強化 読売新聞(2017年10月28日)
メガバンクの一角であるみずほフィナンシャルグループ(FG)が今後10年程度で国内外1万9000人の人員削減を検討していることが分かった。
読売新聞の記事によると、みずほ銀行は、2017年3月期で6035億円の最終利益を確保しているそうですが、今後、金融と情報技術(IT)を融合した「フィンテック」の広がりで銀行以外の新興企業が登場してくる影響で、事業環境は厳しくなると判断。大規模な構造改革に着手することにしたのだそうです。6万人いる従業員を今後4万人にするとのこと。
これまで多く見られた人員削減は「業績不振」が原因でしたが、今回は、「今は儲かっているけども人員削減する」というこれまでとはまた違うスタイル。まさに、堀口さんがこの書籍が紹介していることそのままです...。
決算書を見れば収益も安定しているし、これまでも安泰な金融業界だから就職すれば定年まで安心~♪ という考え方が通用しない…ということですね。
本書では、このような分析と紹介が、「メーカー」「流通業」「サービス業」について掲載されています。
就職する人にとってもこれは目から鱗というか、「必ず内定がもらえる! 必殺の面接技術!」なんていう就活本を読んでいる場合ではない…という感じ、ご理解いただけますか?
「就職活動」を企業側から見ると…
もちろん、この書籍は、就職・転職される方に向けて、業界の動向や求めらるスキル・考え方について紹介していますが、企業側の目線、または経営者目線で見ることができます。
堀口さんは書籍の中で、「この業界の将来は安泰ではありませんから、あまりオススメできません」と学生に向けて話しているわけですが、その業界にいる私たちにとってそれは「あなたのビジネスは、先がありませんよ~」と言われているのも同じ。
ある程度社会人として経験すると「今の若い奴らは、世間や会社のこと、未来が何も見えてな~い!」と口から出そうにもなりますが、この本を読んでいると、「おいおい、若者のこと色々言う前に、自分の足元が崩れて行っていることに、自分自身が気付いてないじゃないの!未来が見えてないのオレじゃないの!」という感じさえしてくるのです。
そんな私たちの足元を確認する意味でも、
また、今まさに就職や転職しようとしている方に将来の参考にしていただくためにも(こちらが本来のこの書籍の目的です)、ぜひご一読いただきたい一冊です。
みなさんのご家族やお知り合いで就職・転職活動をされている方がいらっしゃるようでしたら、面接テクニック本よりも、まずはこの書籍をオススメします。
しかも、kindleの電子書籍で99円です♪d(^_^)
目次は以下の通り。
1 はじめにねらい、対象読者、使い方、自己紹介
1-1 ねらいと対象読者
1-2 本書の使い方
1-3 著者の立ち位置紹介(自己紹介)
2 職業を選ぶということ
2-1 まず軸を決める
2-1-1 やりたいことを選ぶ
2-1-2 得意なこと(適性があること)を選ぶ
2-1-3 世の中の役に立つこと、感謝される仕事を選ぶ
2-2 職業を選ぶタイミングと対策
3 安定した仕事を選ぶには
3-1 自分にとっての安定とは
3-2 安定のためのエンプロイアビリティ
3-3 ブラック企業とその対策
4 業界別に将来を考える
4-1 メーカーを選ぶ場合
4-2 流通小売業を選ぶ場合
4-3 サービス系ビジネス(金融含む)
5 未来の仕事はどうなるか
5-1 会社はどうなるのだろう
5-2 働き方はどうなるのだろう
5-3 AIで仕事はどうなるのだろう
5-3-1 AIの進化スピードについて。
5-3-2 どのような仕事がAIに代替されるのか。
5-3-3 AI化で仕事がどう変わるのか。
6 結びにかえて
次回もお楽しみに!
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